3人のお子さんと一緒に東京から移住した椎谷さんご夫妻。
農業未経験の椎谷陽一さんは地域おこし協力隊として米作りにも挑戦しています。
移住して感じる率直な思いをお伺いしました。
椎谷 陽一 さん(長岡市出身)
椎谷 裕子 さん(東京都出身)
2023年5月に胎内市黒川地区に移住

胎内市への移住を考えたきっかけと決め手は何でしたか?
陽一さん:東京に20年くらい住んでいたんですが、3人いる子どもが大きくなってきたときに、子どもを自然の中で育てたいと思い始めました。
それに加えて、僕が「半農半X」という農業と別の生業を組み合わせたライフスタイルに興味がありました。
自分が食べるものは自給自足で補いながら、農業とは別の生業で収入を得るというものです。
こういう思いを持って2022年5月くらいから移住先を探し始めました。
長野県の移住説明会に参加した際に、全国の自治体が集まる移住相談イベント「JOIN 移住・交流&地域おこしフェア」(2023年1月開催)のことを知り、どんな自治体が出るかを調べていたら、自分の思いに合っていそうな「半農半X」に取り組む地域おこし協力隊(以下、協力隊)の募集に巡り合いました。それが胎内市でした。
イベントで話を聞きに行き、それから胎内市の現地見学にも行きました。
自然があるところはほかにもたくさんあるし、「半農半X」に取り組もうと思えばどこでもできると思うので、本当に取り組める環境であるかを確認することが目的でした。
見学してみて、地域住民の皆さんも協力していただける環境で、市役所の方や協力隊のサポートをしているNPO法人ヨリシロの方も親身になって相談にのっていただけたので、胎内市に移住しようと決めました。
裕子さん:夫から「移住したいんだけど」と話をもらったときに、夫がやりたいことをやらせてあげたかったので、「いいんじゃない?どんなところ?」と二つ返事で承諾しました。
私も東京に固執しているわけではなかったので…。
陽一さん:もっといろいろ聞かれると思っていましたけどね(笑)
裕子さん:胎内市の協力隊の卒業生が定住しているとか、近隣市町村に住んで活動を続けているという話を聞いて、先輩がいる心強さを感じ「胎内市に行こう!」と思えました。
ちょうどそのときに協力隊に関するトラブルをニュースで見たので、協力隊卒業後も活動を続けている人が複数人いるという事実が、私の中では大きかったですね。
仕事について教えてください
陽一さん:協力隊として米作りを中心に行いながら、「坂井神楽」という地域の伝統芸能や「坂井いきいきサロン」という地域の集まりに参加したり、地域の子ども会の企画や運営などに取り組んでいます。
2024年には狩猟免許を取得したので、今後は鳥獣害対策なども地域の方と一緒に取り組んでいく予定です。

裕子さん:私は移住後に仕事を探し始めました。
ハローワーク新発田に利用登録をしましたが、市役所の方が仕事の募集情報を紹介してくれたので、そちらを申し込みました。
ペーパードライバーで車の運転が苦手だったので、家から近いというのも決め手でした。
陽一さん:妻の仕事を区長さん(地域の代表者)や市役所の方が心配してくれて、有り難かったです。
協力隊のサポートをしているNPO法人ヨリシロからも仕事をいくつか紹介してもらいました。
「自分で何とかやってね」という関わり方ではなく、地域の方も市役所の方も「胎内市に来ていただいたからにはお手伝いしますよ」という関わり方をしてくれたように思います。
住まいはどうやって決めましたか?
陽一さん:協力隊として来たので、市が手配したところに住んでいます。
古い家なので、夏は暑いし冬は寒いです。
カメムシやムカデも出るので、僕以外の家族はキャーキャー叫んでいます。
裕子さん:虫にはまだ慣れないですね。あとは家が広くて良いです。
陽一さん:広さは全く困っていなくて、使っていない部屋もあるくらいです。
裕子さん:ほかには、障子の上に飾りの窓があったり、彫り込んだ欄間があったりして、今の新築の家にはない昔のデザインが私は好きですね。
移住前に家の写真を見せてもらったときは「素敵!」と思ってテンションが上がりました!
胎内市の子育て環境はどうですか?
裕子さん:東京にいるときは子どもがどこに向かって走っているかを見張って、何か危険を察知したときにいつでも止められるようにしていたんですが、今は車が頻繁に来ないので、そうした不安も少なくなりました。
子どもが自由に動き回っていても大丈夫かなと思っています。
陽一さん:確かに、東京では何でも子どもに付いて行って親の見える範囲でしか遊ばせなかったです。
今は家の周りでも遊べる場所が十分にあるので、親は屋内にいて子どもだけ外で遊ばせることもよくあります。
冬だと雪遊びができるので、服だけ着させて「外で遊んで来な」って行かせれば自分たちで遊んでくれて、そういうのはいいですね。


裕子さん:家の周りでも十分ですが、樽ケ橋遊園は子どもが遊ぶ場所としていいです!
遊具もあって、動物もいて、ちょっとした乗り物もあって、初めて行ったときは子どもがはしゃいでいました。

陽一さん:晴れている日の遊ぶ場所はありますが、雨の日は隣の新発田市にあるショッピングモールに遊びに行くことが多いので、胎内市にも雨の日に子どもを遊ばせられるような場所があるといいなと思います。
裕子さん:ほかには、保育園に初めて入ったときに、一つ一つの部屋や廊下の広さに驚きました。
この広さはのびのびできていいねって思いました。
陽一さん:東京では新設の保育園に行っていましたが、限られた土地になんとか作ったという感じはありましたね。
裕子さん:狭さを感じさせない工夫をしている園ではあったんですが、胎内市の保育園を知ってしまうと土地の広さには勝てないなと思います。
小学校の校庭も私には広く感じて「広くていいですね」とほかの親御さんに話したら、「ここの小学校は狭い方だよ」と言われてびっくりしました(笑)
陽一さん:そういえば、子どもが小学校の給食が美味しいと移住当初から言っていました。
地元の新鮮な食材を使っているから美味しいのかなと思います。
胎内市に暮らしてみた感想を教えてください
陽一さん:まずは星が綺麗ですね。
「胎内星まつり」というイベントがあるくらい星が綺麗に見える地域だと移住前から聞いていたのですが、本当に綺麗で驚きました。


「胎内星まつり」もそうですが、野外のイベントが多いので子どもを連れて行きやすいですね。
市主催のイベントだけでなく、胎内市に住む人が自発的に行うイベントもあって、親も子どもも楽しめるイベントごとが多いのは胎内市のいいところだと思います。

裕子さん:蛍が普通にいることにも驚きました。野生の蛍を歩いて見に行けます。
陽一さん:水が綺麗だからだろうね。
裕子さん:星や蛍もそうですが、春先に黄砂が車に積もったり、夏にアブが飛んできたり、季節によって小さいトピックがたくさんあるなとも思います。
ほかには、お店が全部大きいですね。
東京で双子が生まれたときに、双子用のベビーカーがお店に入らないので、子どもと買い物に行くことは諦めたんです。
でも、胎内市だったら横並びのベビーカーでもすいすい通れそうで、買い物にも行けたかなと思いました。
陽一さん:東京では買い物だけでなくて、エレベーターも乗れなかったり、駅の改札も入れないところがあったりして、いろいろ諦めていました。
胎内市ならそもそも車移動が基本なので、東京と比べると子どもと一緒にいろいろなところに行けるかなと思います。
車ならいろいろ積むこともできます。
東京にいるときは、2人でスーパーに歩いて行って重い買い物袋を2人で持ったり、重すぎるときは自転車の荷台に買い物袋を乗せたりして自宅に戻っていましたが、車ならたくさん買っても積めばいいので楽ですね。
裕子さん:ご近所さんにお野菜をいただくこともあって、野菜を買わなくてもいいときもあります。ありがたいですね。
移住して困ったことなどがあれば教えてください
裕子さん:今年は雪がたくさん降ったので困っていたんですが、近所の人に相談して、除雪機で除雪をしてもらうなど助けてもらいました。
また、移住前はペーパードライバーだったので、車がないと生活ができないというのはハードルが高かったですね。
今でも車の運転が苦手なので、どこかに行くときは「よし!行くぞ!」と決心してから出かけています。
陽一さん:子どもが通う病院を探すのには苦労しました。
東京では家の近所に選択肢がたくさんありましたが、胎内市ではまずどこに病院があるのかを探すのが大変で、病院の情報も少ないように感じました。
ほかに、僕の地域では子どもが学校から帰った後に友達と「放課後にランドセルを置いてから集合して一緒に遊ぼう!」みたいな遊び方ができないので、少しかわいそうだと思いました。
学校まで遠いのでスクールバスで通っていますが、学校から遠い分、住んでいる地域には近所に同学年の友達がいません。
僕は放課後に子どもが自然のなかで友達と遊ぶことを移住前に想像していたので、そこは違ったなと思いました。
今、小学5年生の長女は住んでいる地域に1学年下の友達がいます。
学年が違うとなかなか仲良くなる機会がありませんが、僕が企画した地域の子ども会がきっかけで仲良くなれて良かったなと思っています。

裕子さん:特別困っているわけではないんですが、方言が全く聞き取れないことがあります。
私が何度か聞き返してしまって会話がなかなか進まないことがあります(笑)
これから地方へ移住を考えている方にメッセージをお願いします
陽一さん:地方に移住すると、周りに人が住んでいないような「ぽつんと一軒家」でない限りは、都市部よりも人との関わりが増えると思います。
都会の喧騒を離れて静かなところに行きたい、人との関係に疲れたから地方に行きたいという感覚だけで移住すると失敗すると思うので、そうした部分も考慮して地方移住するかを決めたほうがいいと思います。
また、雪が降る地域に移住するなら覚悟した方がいいと思います。
家の場所にもよりますが、雪が降ると出勤前や帰宅時に除雪をしないといけません。
日常生活に除雪作業が組み込まれるので、地方でも雪が降るかどうかでだいぶ生活の違いがあると思います。
僕は移住前の12月に現地見学をしました。
そのときも雪が降っていましたが、写真でも自分の住む場所がどのくらい雪が降るかを見せてもらいました。
本やインターネットの情報だけで全部は分からないので、「こんなに雪が降るなんてイメージと違った」とならないためにも現地に行く機会を設けたほうがいいと思います。
裕子さん:夢だけを追って移住するのでなく、現地を見学することは必要だと思います。
「闇雲に地方移住しないほうがいいですよ」と伝えたいですね。
陽一さん:移住相談イベントなどで自治体の対応を見ることも良いと思います。
対応の仕方や人柄は、住むところの特徴を表している側面もあるので、その地域に住む人と直接関わる機会を設けることが大事だと思います。
取材日:2025年1月10日
▶ 椎谷さんの胎内市での活動を知りたい方は、地域おこし協力隊のInstagramやFacebookをぜひご覧ください!
▶ 胎内市では移住相談を承っております。どこに移住するか決めかねている方も、お気軽にご相談ください。移住相談・問い合わせはこちらから!
編集後記
私と同じタイミングで胎内市に移住した椎谷さんご夫妻には大変お世話になっていて、私にとって心強い移住仲間です。
インタビュー当日は雪がどさどさと降っており、急遽オンラインでインタビューをさせていただきました。

「市主催のイベントだけでなく、胎内市に住む人が自発的に行うイベントもあって、親も子どもも楽しめるイベントごとが多いのは胎内市のいいところだと思います。」というお話がありました。
椎谷さんご夫妻に「胎内市に住む人が自発的に行うイベントは例えば何がありますか?」と尋ねたところ、胎内市の活性化に取り組むBASE CRAFTERが主催の「SLOWCAL MARCHE」や、胎内市の大長谷集落に住む協力隊の卒業生などが主催の「オオナガタニ2.0フェス」を挙げていました。
※ イベントについては、Instagram(SLOWCAL MARCHRE、オオナガタニ2.0フェス)や、本サイトのコラム記事「胎内市を人が集うまちへ、SLOWCAL MARCHEでゆったり。」をチェックしてみてください!
特に、夏から秋にかけての週末は毎週何かしらのイベントが開催されており、盛りだくさん!
「胎内市をもっと盛り上げたい!」とさまざまなことに取り組む人がいるからこそのイベントの多さだと感じますし、自然のなかでイベントを楽しめる環境は都市部にはない良さだと思います。
椎谷さんご夫妻から「移住前に現地を見学した方が良い」というお話もありましたが、地方移住を検討している方は、イベントのある日に現地見学に行くのも胎内市の雰囲気を知る良い機会になると思います。
イベント情報は胎内市観光協会のホームページからご確認いただけますのでチェックしてみてください。
また、現地見学などを検討されている方は、本サイトの移住相談・お問い合わせからお気軽にお問い合わせください。
お力になれるよう対応させていただきますので、よろしくお願いします。
(地域おこし協力隊 重田)